クリスマスには・・・たくさんのオブジェが飾られてキラキラと余所行きの顔をしていた並木道
2月の今は、葉を落とした木々が・・・心なしか寒そうに風に吹かれて揺れていた

森林公園・・・いつもの西門前
傾いた陽を浴びながら・・・俺はを待っていた
ポケットの携帯を取り出して時間を確かめる
待ち合わせは午後3時・・・ディスプレイには15:09の文字

珍しいな・・・あいつが遅れるなんて

との待ち合わせ・・・必要以上に早く来るのがあいつの癖で
俺は約束の時間前からじっと待っているに、駆け寄るのが常だった

何かあったんだろうか・・・

ふとよぎる不安を打ち消すように・・・大通りの向こう側、駆けてくるが見えた
行きかう車を挟んで、待っている俺を見つけて、は「ごめん」と胸の前で手を合わせる
声は聞こえなくても・・・届いてくるの言葉
待ちわびたシグナルが・・・ブルーに変わり、はゼブラの上を走る


「珪くん、おまたせ!ごめんね、遅くなっちゃった」
「ん・・、気にするな」

済まなそうに肩をすくめたの前に・・・手を差し出した

自然に手を出せるようになるまでには、少し時間がかかったけれど
付き合って、もうじき一年・・・
当たり前のように・・・繋がる俺たちの手
そして・・・いつものようにただ広い公園を散歩する


「珪くん・・・」
「ん?」
「どうして遅くなったのか聞かないの?」
「ん・・・じゃ、聞く」

の顔が見る見るうちに嬉しそうに変わってゆく
話したいことがある・・・だから聞いて欲しい
そんなときのいつもの表情だ


「あのね〜、駅からここへ来る間に、ものすご〜く可愛い犬に会ったの
 それでねそれでね『可愛い〜〜』って近寄ってナデナデしてたら、大歓迎されちゃってね
 お散歩中の柴犬ミックスちゃんだったんだけど、女の子でね、ものすご〜く可愛くて
 『お名前は?』って飼い主さんとお話したりして、手を繋いだり耳の後ろあたりを撫でたりしてたら
 サクラちゃん、あ、そのワンちゃんね、サクラちゃんが寝転がってお腹も撫でろって催促してきて〜
 もぉ、めっちゃ可愛くて、ず〜っと戯れちゃったの、気づいたら3時過ぎてて、もう、ごめんね、珪くん」
「ん・・・別に」
「あのね珪くん、サクラちゃん、すっごくキュートだったんだよ」
「へぇ・・・」

俺たちは歩きながら・・・何をするわけでもなくて、いつもなんとなくの話しを聞いていることが多い
時折『珪くん聞いてるの?!』って怒られたりするけれど・・・
の話は、俺なりに面白くて・・・返事をしなくてもちゃんと聞いてる

ただ、合いの手を入れて欲しいには少し不服だったりするらしく
俺は繋いだ手を『ムギュ』っとつねられたりする・・・・
まあ・・・そんなことも含めて、俺はと居る時間が好きなんだよな・・・って思う


「ん、もぉ、珪くんってのは、感動ってもんがないのかしら」

って文句を言ったの・・・少し膨れた頬を・・・つついて遊ぶのも、俺の楽しみの一つ


「もぉ!私の顔で遊ばないっ!」
「ん・・・じゃ、別な場所なら遊んでもいいのか?」

俺はそう言っての顔を覗き込んで・・・そのまま視線を下へずらした
その言葉と視線の『意味』をしっかりわかっている


「珪くんっ!」
「ははは」

繋いでいた手をはずし俺の尻を叩こうとする
俺はいつも同じパターンのの攻撃から逃げるため・・・走り出す
そしては、悔しくて俺を追いかける・・・

まるで子犬が戯れているように・・・追いかけあう俺たち
夕陽がそんな二人の影を細く長く伸ばしていた・・・



いつものように・・・森林公園の西門から東門まで・・・こうして二人で散歩する
駅で待ち合わせれば・・・時間のロスもないけれど
それでも、俺は・・・と二人でこの公園を歩くのが好きだったりする

束の間の追いかけっこで・・・少し温まった身体
俺は・・・の肩を引き寄せた


「なあ・・・
「なぁに?」

は・・・犬が好きだろ・・・」
「うん!大好き、どの子もめっちゃ可愛いもん」

「じゃ、猫は?」
「猫も大好き!ああ、喉ナデナデしてごろごろさせたいよぉ」

「ん・・うさぎは?」
「好きぃ!うさぎって、ほわほわして、可愛い〜、寂しいと死んじゃうからいつも可愛がってあげないと」

「じゃ、ハムスターは?」
「好き!ハムちゃん!あのね、ひまわり食べた後のハムちゃん、手のひらに乗せてジーって眺めたら、最高可愛いんだよ」

「はは、食後が可愛いのか、それじゃ亀は?」
「好きっ!亀ってさ、動きがスローモーって思うでしょ、でも水の中だと早いんだよ」

「へぇ・・・おまえ飼ったことあるみたいだな、それじゃ、鳥は?」
「好き〜!鳥はね、あんまり意思疎通できないんだけど、でも、やっぱり生き物は可愛いの
 犬も猫も、ウサギもハムスターも亀も鳥も、みんな大好きだもん」

は、そういって目を輝かせた
俺は・・・そんなが可愛くて仕方なくて・・・
肩をぐっと引き寄せて、耳元で、ささやいた


「なあ・・・それじゃ、葉月珪は?」
「え・・・」

「葉月珪って生き物は・・・好きか?」
「珪くんは・・・」

「ん・・・、珪くんは?」

立ち止まったは俺から離れ・・・口を少しもごもごさせて、上目遣いに俺を見た



「珪くんなんて・・・」
「ん・・」
「私は、珪くんなんて、もぉもぉ、大大大、だ〜〜い好きなんだからねっ!!」

そう言って・・・は両手を広げて俺の胸に飛び込んできた
俺は・・そのままを抱え上げ・・・抱きしめた


・・・俺も、おまえを大好きだ」
「珪くん・・・」

俺たちは・・・訳もなくこうして愛を確かめ合う
口付けるよりも・・・身体を求め合うよりも・・・
時々、こんなひと時が欲しくなる・・・


そしてまた俺たちは・・・手を繋ぎ、東門へと歩き出す
繰り返される日常の中で・・・二人の時間が重なり合っている
今までも、ずっと、これで良かった
だから、これからも・・・ずっと、こうしていような・・・


と繋いだ俺の手・・・温もり以外も伝わって


・・・なんか手が犬くさい」
「え?!」

冬の日の散歩道・・・俺たちの影はずっと一つ・・・




END









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